A君を殺すな
A君。
自主性や気づきを大切にしている企業は多い。気づきとは周囲の物事を注視し、それに気づけるか。自主性はその気づきをもとに行動できるかというもの。若い人や無能な人にはその2つが欠けていることが多い。
若い人に関しては経験不足が理由だ。
夏の会議室に4人の人が集まる。その部屋はエアコンはあったが、電源がついていなかった。
4人ともに誰もがエアコンをつけることは知っているし、つけたところで何かあるわけでも無い。
4人の行動はそれぞれ違った。
A君は暑いと感じて、エアコンをつけに行った。
B君は暑いと感じていたが、つけていいのか不安で遠慮している。
C君は暑いと感じつつも、誰かがつけるだろうと思って動かなかった。
D君は暑いとも寒いとも感じないし、他の人が暑いと感じているかも知れないという思考がない。
これが、気づきと自主性の違いだ。
A君は気づくことができて、自主的に行動ができる。仕事でも細かいところに気づいて、言われたこと以上にやってくれる可能性が高い。そういう人間はやる気があり、成長したいと願っていることが多い。
それを潰すのが、無能な上司と周囲の環境だ。
無能な上司は、優秀な部下を目の前にして育成することを止める。始めのうちはそれでも優秀なので仕事はしてくれる。しかし、しばらくすると心境が変わる。「この人の下で働いても成長がない」と思うと転職するし、「この人の同じくらいやらなくてもいいんだ」とサボることを覚える。この決断がどちらに転ぶかはその人次第ではあるが、原因となるのは上司である。
周囲の環境も大切だ。やる気のない社員が多いところだと、成長を望むと辞めるしサボるようになる。初めは環境をいい方に変えようとするが、それが無理と分かった時に糸が切れる。進んでなんでもするA君は損をするだけで、いずれ知ることになる。「なぜ自分ばかりやっているのか」と。そういう人材が流出し続けてしまうと、組織のレベルは下がり、組織として改善することが困難になる。
組織には同じくらいの能力の人が集まるともいうので、優秀な人はどんどん出ていくべきではある。会社としてはその人材を残した方がうまくいくと思う。A君のような人材を残していけば、A君が働いているから、A君が上司ならこの仕事をしたいと思う人も多くなるだろう。
会社としてはA君を流出させない環境づくりと、人望の厚いA君を見つけるところが第一歩だ。